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伊根の舟屋
伊根の舟屋 ―集落の景観と今昔―

わかめ刈る与佐の入海かすみぬと 海人にはつげよ伊禰の浦風 
伝鴨長明  

京都府の北部に位置し、丹後半島の一端に伊根の海があります。自然の景観に恵まれ、リアス式海岸の若狭湾にのぞんで、古くから漁業で生計を立て、伊根鰤(ぶり)で知られています。 伊根の海は三方が緑の山にかこまれ、入江をなして、湾の入口中央に、「椎」の古木でおおわれた周囲1.5キロの「青島」が横たわり、天然の防波堤の役目を果たしています。

海は青く澄んで、湾内はいつも波静かであり、周囲約4キロの海岸には、伊根独特の舟屋(舟小屋)の集落が、ちょうど、将棋のコマを並べたように建ちならんでいます。その静かなたたずまいは、南方の島国を思わせる異国的情緒をもっています。潮の干満の差は少なく、年中でも約50〜60a程度です。また海が急に深くなっているので、舟の出し入れに便利であることなども、舟屋の集落の形成の条件となっています。




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住民ははじめ、現在の海岸線より約20bほど上の山際に住みついていましたが、海を生活の根拠とし、漁業を営む上で便利な海岸近くをおりてきて、山ぞいに母屋を建て、海岸に舟小屋をつくり、すぐに海に出られるようにと考えました。

舟小屋は元藁葺きの平屋で、周囲には縄やむしろを吊り下げた粗末な囲いをして、その中に「トモプト」と呼んでいる長さ7.54b、幅1.06b、深さ0.57bの胴体を黒く塗った細長い型の舟を引き込んでいました。現在、草葺き平屋の舟屋は姿を消したが、「青島」の蛭子神社前の海岸に、復元されてその面影を残しています。

伊根の舟屋

舟屋の構造は、土台や柱は「椎」の木を用い、梁(はり)は松の原木を使用してがっしりと組んであります。舟屋の間口は二隻引、三隻引といって、まちまちの大きさであるが、どの舟屋も妻入姿をもち、海側に小さな一定の窓が見られるのも特色の一つです。舟屋は元来階下に舟を引き込み、二階は縄や綱などの漁具を置く物置場であり、雨や雪の多いこの地では、網の干場でもあった。それで二階の床板は張りつめず、階下から網や縄を引き上げやすいように、「歩み板」といって幅30a、厚さ6aの板を渡し、風通しや水下りに留意されています。



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伊根の舟屋 現在、伊根の舟屋の数は235棟が数えられますが、昔ながらの舟を出し入れする舟屋のほかに、外見だけは舟屋の構えをしていても、改造して機織りの作業場になっている舟屋もあります。戦後、舟屋は次々に新築や改造されて、二階は客間として、床の間付きの立派な座敷がつくられている舟屋も多くなりました。

伊根を訪れる観光客は、まだそれほど多くはありませんが、民宿を営む家は20数軒あり、夏が近くなると、魚釣りを楽しんだあと、夕方、二階の窓からカモメの飛び交う海を眺め、ひととき心をなごませます。 また、料理は鯛の活造りや、ヒラメ、イカの刺身は新鮮で喜ばれています。最近、漁船はモーター船の大型化が進み、舟屋と漁船のバランスが崩れ、舟屋に入ることができなくなって海に浮かべていますが、舟屋は伊根の漁民にとって、今後も欠くことのできない生活の基盤です。また、個々の舟屋だけでなく、伊根の舟屋の集落の存在は、その景観とともに、重要な文化財としての価値をもち、深い意義をもっています。



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